エピソード:自分が大切にされたから相手を大切にできる
保育園でのエピソードです。
1.状況
保育室での自由遊びの時間の出来事。
2歳児Aちゃんと1歳児Bくんとのやりとりです。
Aちゃんが積み木を積み上げて遊んでいまず。
B君がそれを欲しがって手を伸ばしますが、Aちゃんは積み木を抱えて嫌がりました。
B君がそれを欲しがって手を伸ばしますが、Aちゃんは積み木を抱えて嫌がりました。
2.エピソード
Aちゃん: | しばらくして積み上げるのをやめて、積み木をおままごとのキッチンシンクの中に入れる。そして、シンクから少し離れてお皿を出して遊び出す。 |
保育者: | 「積み木使い終わったの?」 |
Aちゃん: | 慌ててシンクに戻り、首を振る。 |
保育者: | 「終わったら貸してあげてね」 |
B君: | 「う"ー」と納得いかないような声を上げる。 |
Aちゃん: | そんなB君を見てニンマリする。 |
保育者: |
一見いじわるなように感じるも、「使ってないのだから貸してあげなさい」など、強制的な関わりは控える。
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B君: | 保育者の顔を見て、貸して欲しいということを表情や動きで強く伝えてくる。 |
保育者: | 「貸して欲しいねぇ」 「でもAちゃん使ってるんだって」「終わったら貸してもらおうね」 他の積み木をB君の近くに置いてみるが、B君は手で払いのける。 Aちゃんが使っている積み木でなければ納得しないみたい。 |
Aちゃん: | そんなB君を横目で見たり、時には"積み木は自分のもの"と言わんばかりに積み木を抱きかかえたりしながら遊びを続けている。 |
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Aちゃん: | 自らB君に近寄り「はいどうぞ」と、積み木をB君に貸してあげる。 そして、まだ1歳児のB君が出来ない難しいところを助けてあげながら一緒に遊び始めた。 |
保育者: | 貸してあげられたことをあえて褒めたりはせず、Aちゃんが自分で決めた主体的な行動を認め喜び、引き続き見守った。 |
3.振り返り
Aちゃんは積み木を"自分のもの"としっかり認めてもらえた満足感や喜びから、自分で納得してB君に貸すことが出来たのだと感じました。
子どもが自分の気持ちに納得出来たときの自発的な意欲と、本当はどうすれば良いのかを知っている(この場面では玩具を使い終わったら貸すこと)ということを改めて知ることが出来た場面だったと思います。
子どもの同士の玩具の貸し借りを、大人が指示して形付けるような関わりをしなくて良かったと思いました。恐らく、「貸してあげなさい」等と少しでも強制をしていたらAちゃんは泣いたり嫌がったりして、本来不要な慰めや寄り添いが必要になっただろうと思います。何よりAちゃんと私の信頼関係や愛着関係は崩れ去っていたことでしょう。そして、次に同じような場面が訪れた時、貸し借りを強制させられた記憶が蘇り、頑なに貸すことを嫌がり抵抗するようになるでしょう。
今回の様に、大人に自分の思いや意思を大切にしてもらい、"自分のもの"という概念の理解が進むことで、相手の気持ちを理解し自ら貸し借りすることが "身に着いて" いくのだと、多くの子ども達を見て確信しています。これは大人が主導して貸し借りを覚えさせて "表面的に形付ける" こととは全く異なるように思います。
自分が大切にされたから相手の事も大切に出来るということを忘れないようにしたいですね。