エピソード:葛藤を乗り越える力
保育園でのエピソードです。
1.背景
園庭での自由遊びの時間の出来事。
給食の時間が近づいてきたので保育士は子ども達に玩具を片付けて集まるように声をかけています。
片付けが終わり保育士のもとに集まる子ども達。そんな中、Aちゃんはまだ遊びたいようでお片付けが出来きません。そんなAちゃんに保育士Bは「Aちゃん早く片付けて、みんなもう集まってるんだけど」と片付けを急かしています。遊ぶでもなく片付けるでもなく、その場でしゃがんで動けなくなるAちゃん。遊びたい気持ちと片付けなきゃという気持ちの間で葛藤しているようです。
2.エピソード
保育士B: | Aちゃんの様子にしびれを切らせて… 「Aちゃんまたなの?いっつも遅いよねぇ」 「もういいです。待ちません!」と立ち去る。 |
Aちゃん: | 寂し気で悲し気な表情でうつむいている。 1人園庭に取り残されてしまう。 |
保育士Ⅽ: | Aちゃんにゆっくり近づいてしゃがみAちゃんの目線に合わせる。 「Aちゃん、まだ遊びたかった?」 |
Aちゃん: | コクリと頷く。 |
保育士Ⅽ: | 「そっか遊びたかったね。そうだよね。」 少し間を置いて… 「片付けどうする?」 |
Aちゃん: | 表情が戻る。使っていた玩具を持って立ち上がり、すぐに片付けてみんなのもとに集まった。 |
3.振り返り
いつもこのエピソードのようにスムーズに進むわけではありませんが、子どもの気持ちを聞いてあげること、受け止めること、共感を示すことの大切さがよく分かります。
保育士Bは自分がやらせたいことやって欲しいことを伝えてから立ち去りました。
保育士Cはまずは「まだ遊びたかった?」とAちゃんの気持ちを聞いてから「そっか遊びたかったよね」と共感しています。自分の気持ちが分かってもらえたAちゃんは遊びたい気持ちに折り合いをつけて気持ちを切り替えることができたようです。
どちらが正しいどちらが間違っていると言うつもりはありません。人それぞれの考え方があり、保育士Bの関わり方だけでもしばらくすれば片付け始めたかもしれません。
但し、玩具を片付けるという行動だけみればどちらも大差がないように見えるかもしれませんが、Aちゃんの心の状態はどうでしょう?
保育士Bの関わりだけでは自分の気持ちが分かってもらえず燻ぶったままで、保育者へのひいては大人への信頼を失われるかもしれませんね。保育士Cのように丁寧にAちゃんの気持ちを捉えて共感してあげることで「この人は私のことを分かってくれている」と信頼関係が生まれ自己肯定感が育まれていくのです。
このように、大人の関わり方1つで心の育ちの面では大きな違いが生まれてきます。
ブログの中で何度もお伝えしていますが、子どもは例え自分の中の要求を満たせなくとも(今回のケースではまだ遊びたいという要求)、気持ちを十分に受け止めてもらえさえすれば葛藤を乗り越えて自らやるべきことに向かおうとするのです。
気持ちを受け止めることに関してはこちらの記事『親のアクションはどんな時でも共感スタート -』に詳しく載っています。是非ご覧ください☆